ティムライト王国城下町 噴水広場にて。



「は、早く……あなただけでも…逃げ、て……」



背中から血を流している若き母親の姿と、状況をまったく理解できていない小さな娘。



そして、人影はもう一人。



「逃げても無駄なのに」



抑揚のない声が、響く。



真っ白な髪に藍の瞳。手にはロッドが握られ、澄んだ紫色の大きなアメジストが煌々と煌めいている。
大きく開いた胸元には、血のように紅い三日月の紋章が淡く光を放っていた。
肌は、生気を失ったかのように―――青白い。



「お、お願い……私は死んでもい――――」



母親の言葉を待たずに、鋭い衝撃波が飛んだ。
衝撃波は肉体を深く裂き、母親は断末魔をあげることなく事切れた。
倒れ込んだ肉体から、ゆっくりと血が広がっていく――――



「お母、さん……?」



不思議そうに娘が母親の顔を覗き込んだ。幼すぎて、死を理解できない…といったところか。
けれどいつもと様子が違うことに気づいたのか、小さな手でゆさゆさと母親の体を揺する――――もちろん反応はない。



「お母さん、どうしたの?なんで体から赤いのがでてるの?」



母親の死した体を揺すり続ける娘に、女が一歩近づいた。
女は微笑みを顔に貼り付けて、一言つぶやく。



「お母さんのところに、連れて行ってあげる」

「え?」









また、刃が飛んだ。






















































カミノウタ



第5話

−からっぽの町−





























































パチパチという乾いた音は、炎のはぜる音。
そして、何かが焦げたような嫌な臭いは





家と、木と……人が燃えている臭い――――だった。





と、ふらふらとした足取りでルゥが門をくぐろうとしている。とっさにアリヤが声を張り上げた。



「おい、危ねえ!まだガダイの奴らがいるかもしんねえだろ!?」



ルゥの腕を掴もうとしたが、むなしく空気を切るだけに終わる。
彼女は足音もたてずに、ゆっくりとまわりを見渡しながら町中を歩いていく。



「……あいつひとりじゃ危ない。行こう」



クラウドが残りの三人を促した。互いに頷き、歩き始める。



「ひどい臭い…やな……」



ヘビスが顔をしかめた。それにはモモカも頷いた。



「そうね……国民はひとり残らず殺したのかしら」

「ひどい奴らや…戦争なんかやって、何の意味があんねん…」

「静かにしてろ。もし生き残りがいたら、そいつの声が聞こえないだろ」



クラウドが二人に言い放った。モモカが何か言おうと口を開いたが、すぐに閉じて黙り込んだ。
ルゥは、まだ頼りない足取りで歩き続けている。小石にでも躓いてしまえば簡単に転んでしまうだろう。
クラウドは彼女の隣より一歩下がった位置へと移りそのまま一定の速度を保ちながら歩き続けた。



ふと、気づく。

彼女はやはり、城へ向かっているのだろうか。



「ルゥ。お前、さっきからどこに…」

「お城。広いから、誰か生き残ってる人がいるかもしれない」

「……そうか」



それきり、会話はなかった。
血痕が残る道を、ひたすら歩く。ただそれだけ。
歩き続けて噴水広場にでた時、ルゥの足が突然止まった。それに合わせて四人も立ち止まる。



「ひ、でぇ……」



アリヤが珍しく、眉を寄せた。



――――目の前には、あまりにも無惨な光景が広がっていた。






血の海に横たわる、若き母親と









その母親に覆い被さるようにして事切れている、小さき娘と









少量の返り血を顔に浴びた、まるで無傷の魔導師の女。









女はゆっくりとこちらを振り向くと、顔に付着していた返り血を拭った。
そして一言、つぶやく。



「まだ、生き残りがいたの」

「なんで、殺したの……?」



ルゥの問いに女は首を傾げ―――問われた意味を理解したのか、あぁ、とつぶやいた。



「だって、この王国に住む人はみんな殺せって……そう命令されたから」

「何よ、それ……命令されたらなんでもするっての!?」



驚くほど穏やかに微笑んでみせる女にモモカが叫ぶ。
迷うこともなく、女はゆっくり頷いた。



「おい、王国の住人は全員殺せって命令されたって言ったな」



言葉を失ったモモカのかわりに、渋い表情を浮かべるクラウドが一歩前に出た。



「王家の、人間もか」

「必ず消せって、命令されたから」



ルゥが目を見開いた。



「首ならここに」



ごとん



女が持っていた真っ黒な袋を逆さにすると、重い音と一緒に首が転げ落ちた。
ごろり、と生首はルゥたちの方向を向く。





間違いなく、国王の首だった。





「……王子は、どうしたんや?」

「醜い化け物ならいたけど。ついでだったから、始末したわ」





女のその言葉が合図だったかのように、ルゥが地を蹴った。








手には真っ白な棍。








とっさにクラウドがルゥを背後から羽交い締めにした。





「ルゥ!」

「離してぇ!!!!」



ルゥが町中に響くほどの絶叫を放った。クラウドをふりほどこうとするが華奢な彼女の力では抵抗にもならない。
それでもふりほどこうとしながら、ルゥは目の前の女に叫ぶ。



「許さない……許さない!!!どうしてこんなこと!!!」

「ルゥ、やめるんだ!!」



クラウドが諭そうとするものの彼女はまったく引き下がるつもりなどない。
むしろ目の前の憎い女を殺そうと、躍起になっているようだった。



「どうしてあなたたちは戦を望むの!?武力で得た栄光なんて、いつか必ず崩されるじゃない!!!離して、離してよ…!!」



喉から嗚咽が漏れる。
ぼろぼろと流れる涙のために、彼女はそれきり何も言えなくなった。



――――女は国王の首を拾い上げて丁重に袋の中にしまう。ルゥの叫びなど、まったく聞こえていないようだった。




「……もうひとつだけ、聞かせろ」

「なに?」

「街道にあった、大量の足跡はなんだ?」



アリヤの問いに女はまた、あぁ、とつぶやいた。



「あれはガダイ軍の人たち。町や城、それから王家の紋章が入った旗を焼き払って
人間たちをだいたい殺し終えたらさっさと帰っていったの。王家の人間の始末や、残民の後始末は私に任せてね」



クラウドは再び眉を寄せた。まるで他人事のような言い方だ。この女はガダイ帝国の人間ではないのだろうか。
疑問を感じた彼が口を開こうとすると、女がロッドをかざした。



「さてと。これで質問は終わり。私ももう帰りたいから、早く選んでね」

「は?」

「逃げて生き延びるか……それとも、空気の刃に引き裂かれるか」

「――――!!」



女の穏やかな笑みが、残忍な笑みへと一変した。
危険を感じたクラウドは、放心状態のルゥの腕を掴み全速力で走り出した。
アリヤ、ヘビス、モモカの三人も二人を追いかけるようにUターンをかけ、走り出す。



「……そう、逃げるんだ」



残念そうに、女はひとりごちた。





















































正門を抜けたところで、五人の足は止まった。当然のことながら、全員息が切れている。



「くっ、そ…なんなんだよ、アレ!?」

「だか、ら……ガダイの、人間、でしょ?」

「で、でもなんか、他人、みたいな言い方して…」



言葉の途中でヘビスがむせた。アリヤがしかたねぇな、と彼の背中をさすってやる。
クラウドは壁に背を預けて座り込んだ状態で、だいぶ息づかいは元に戻ってきているようだった。
そして――――



「……ルゥ、大丈夫……か?」



隣でへたりこんでいるルゥに声をかけるが、反応はない。
――――涙は乾いていた。瞳に浮かんでさえいない。



「ルゥ」



肩に手を置いて、もう一度呼びかけてみる。
すると彼女は頭を垂れたまま、ふるふると首を横に振った。






そっとしておいた方が、いいだろう。






彼らの間で、暗黙の了解が取られた。






「…行こか。みんな待っとるやろうし…」

「そう、ね…」



全員の呼吸が回復したところで、ヘビスとモモカがゆっくりと立ち上がり街道を歩き始めた。
それに続くように三人も立ち上がり、二人の後を追う。…ルゥの足取りは、頼りない。
やがて街道を抜け砂浜に辿り着いた時には、とっくに12時を回り夕方になりかけていた。
甲板で掃除をしていた三人の船員が五人の姿に気づき、一人は船長を呼びに。
もう二人はモップを放り出して駆け寄ってこようとして、止まった。



「…おい、あの表情」

「ああ…何も聞かない方がよさそうだ」



二人の船員は無言で彼らを通し、完全に見送ったところで再び甲板の掃除を始めた。
その船員たちの正しい判断に、クラウドは心の内で感謝した。

船内に入ると、ばたばたと船長が駆けてきた。口を開きかけていたが、五人の表情を目にすると「そうか…」とうつむいた。



「…ゆっくり休め。特にお前はな、ルゥ」



船長の言葉に返事は返さず、彼女はただうなずくのみだった。
他の四人もうなずくだけ。返事を返す気力さえなかったようだった。



「船長」



五人がそれぞれ自室に戻ったあと、ティルが船長に話しかけた。ん?と船長は振り返る。
彼が何が言いたいのか理解したのか、あぁ…と船長はうなずいた。



「やっぱ、噂は本当だったみてえだ。ティムライトはぼろぼろだったらしい」

「……そうですか。次はどこに向かわれるおつもりで?」

「サゥドに行こうと思ってる。"あいつ"が今回のことをどう思ってるか、聞きたくてよ。
サゥドならここから一週間半くらいだしな。ついでに買い出しもたっぷりできる」

「なるほど。確かに"あの人"の意見は貴重ですね。市場も品が豊富です」



船長の判断にティルがうなずいた。それから真剣な面持ちで、ひとつ尋ねた。



「ルゥさんのことはどうなさるおつもりで?」

「どうもこうもあるかよ。うちで引き取るしかねえだろ?あの娘っ子は、もう行くところはねえんだからよ。
…まあ、しばらくは仕事はできねえだろうがな。自分の故郷が滅んだんだ、しかたねえだろ」



ふぅ、と船長はため息をついた。それを見て「ため息なんて珍しいですね」とティルが感心したように言う。
「うるせぇ」とばかりに、船長はティルの頭をぽかりと殴った。


























































(許さない……許さない!!どうしてこんなこと!!!)



(どうしてあなたたちは戦を望むの!?武力で得た栄光なんて、いつか必ず崩されるじゃない!!!離して、離してよ…!!)



















いつまでも耳に残る、あの声。
いつもは穏やかに見えたあの子が、自分の故郷のこととなるとあんなになるなんて。



「黄泉」



モモカ……ティアは壁に身を預けている黄泉に声をかけた。ぶっきらぼうに黄泉は返事を返す。



「ティムライトに、メジストがいたわ」

「何?ということは…」

「……今回のことは、ドレットが関係しているかもしれない。もしかしたら、あいつの計画っていうのは――――」






大戦争を、起こすこと。






「そんなことをして何になる。武器商人というわけでもなかろうに。大帝国でも建国する気か?」

「案外、そうかもしれないわよ」



黄泉が眉を寄せた。「どういうことだ」と疑問をぶつけようとしたその時、机の上に乗っていた水鏡に反応が現れた。
波紋が揺れる。やがて水面が落ち着くと、水鏡には天幕の向こうに静かに座っている人影の姿があった。



「ドレット……今日、ティムライトに行ったらメジストがいたわ。…あんた、ガダイに荷担してるわね?」

「いかにも」



ドレットはためらいもなく頷いた。



「あんた、34世をそそのかしたんじゃないの?もうちょっとで……ようやく戦争がなくなるはずだったのに!」

「面白いことを言ってくれるな。戦争を再開するのは34世の意志だ。私はただ、奴の力添えをしたのみ」



楽しそうに回答をしていくドレットに、ティアはギリ、と奥歯をかみしめた。



「あんた、何をするつもり?」

「そうか、お前にはまだ話していなかったか」

「……計画のこと?」

「そうだ」



まさかという思いを抱いて、ティアが再び口を開く。



「ガダイ帝国を操作して大戦争を起こして、ガダイが世界を支配したところで34世を暗殺。
そして事前に34世の右腕にのしあがっていたあんたが、かわりに世界の支配者になる。
――――こんなこと、しでかすってんじゃないでしょうね」

「さすがに勘が鋭いな」



ドレットが口元を歪めた。それと同じように、ティアが眉を寄せる。
ティアが思っていた以上にドレットは腹黒いようだった。



「……もし、あんたの存在や計画をお父さんたちが知って、あんたを止めようとしたら……あたしはあんたのスパイってことになるワケ?」

「そうなるだろう。お前の父親や船員たちが団結したところで、我ら組織にかなうはずがないがな。………だが、ティア」



突然、声のトーンが落ちた。



「もしお前が私の敵に回ろうというのなら――――契約違反となるな」

「……!!!」



ティアの表情が強ばった。後ろにいた黄泉も珍しく目を見張る。
小さくティアの肩が震える。喉も震えていた。



「わ、わかったわ……あんたの敵には、回らない……。だから、だから――――!!」

「……さて、私も忙しいのでな。話はこれで終わりだ」



水面が揺れる。波紋が消えた時には以前と同じく、水は元の輝きを取り戻していた。
ティアの体を支えていた足から一気に力が抜ける。まだ、体は震えていた。



「大丈夫か?」



黄泉がゆっくりと近づき、ティアの傍らにしゃがみ込んだ。
微かに彼女は頷いたが、どう見ても大丈夫には見えない。
彼女にとって、ドレットはそれほどまでに恐怖の対象になり得る者なのか。






薄暗い部屋の中で、ドレットは邪悪な笑みを浮かべた。
――――独裁者。ドレットの代名詞に最もふさわしい言葉である。



「メジスト」

「ここに」



抑揚のない声とともに、女――――メジストの影が天幕の向こうに映った。



「王国ではご苦労だった。次の仕事を与えてやろう」

「ありがとうございます」



礼の言葉を述べるものの、その言葉には何の感情も込められていない。だがそれにはまったく頓着せず頷いて、ドレットは続ける。



「黄泉を抹殺しろ。それから―――」



ティアの力ではドレットを止めることはできない。ひとつだって傷を付けることさえ不可能だ。
だが黄泉ほどの者ならば、ドレットを止めることは可能かもしれない。彼女の"本気"は未だ未知数である。
情報によると二人が乗っている船には黄泉と同格か、それ以上の実力が備わっている若者がいるという。


























「手段は問わん。ハザード・ラキャットの船を、潰せ」


























災いの芽は、早めに摘んでおくに限るだろう。





















































二日後。



涼やかな倉庫の中で、ヘビスはペンを手を記録用紙に何かを一心に書き込んでいた。
一週間半ほどかけて港町サゥドに向かうということで、船長に食料のチェックを頼まれていたのだ。
だいたいのことを終えてしまうと、ヘビスは冷たい床の上に座り込んだ。
眉間にしわを寄せて、考える仕草を取る。



(んー…ギリギリってとこか。サゥドに着けばだいぶ買い込めるけど、
それまでは切り詰めるかどこかで買い足すとかせんと厳しいな…。でも、この近くに買い込めるような町なんてあったやろか…)



考えてもいい案は浮かびそうにない。ヘビスはまだこの周囲の地理にはあまり詳しくないし、船長に尋ねるのが妥当だろう。
軽くため息をついて立ち上がり、倉庫の扉を開いて外に出る。
少々暑苦しい空気が広がったが、それも慣れたのでまったく気にせず船長室に向かおうとしたところで――――足を止めた。



やけに、静かだ。



いつもならば昼休みであるこの時間帯は賑わっている。それがどうしたことか、いつもの賑やかさはない。
まだ短い間ではあるが、同じ職場で働く仲間の故郷が滅んだからだろう。
いや、それ以前の問題か。

今回のことで勢いづいたガダイは、各国に間髪入れず攻め込むだろう。
そしてあれよあれよという間に、ガダイ大帝国の誕生だ。
ようやく終わろうとしていた争いの歴史が再び動こうとしていることに、みんなショックを受けている。
ヘビスもいつものように、モモカにアタックしたり仲間と騒いだりする気にはなれなかった。
そして一番つらいのは――――たぶん、ルゥ自身。

船長室へと繋がるドアをノックして、返事があったところでノブを回しドアを開く。
部屋の中にいた船長はヘビスの姿を確認すると、「もう終わったのか」と声をかけた。ヘビスはしっかり頷く。



「んで、どだ?持ちそうか?」

「んー…切り詰めるか、どこかで買い足すかせんと……。タントゥじゃあ買い足せへんかったし…」

「厳しいか…」



船長は珍しく帽子の被っていない黒い頭をぽりぽりと掻いた。
この船には大勢の人々が働いている。三十人はいるのだ。
まあそれだけいれば仕事は分担され、ひとりひとりの負担は軽くなるわけだが。
しかし、逆に食費や人件費がかさむのは当然である。中には居させてもらっているのだからと給料を求めない者もいるが、それも一部。
他の船員たちには普通の相場より少し少なめではあるが、きちんと給料を払っているのだ。
いろいろ不満はあるだろうに、それでも文句ひとつ言わず――――いや、時々言っているが――――みんな働いてくれている。
それなのに今度は食事を切り詰めてしまうなど、船長にはできなかった。
残された道は、ひとつ。



「…うし、どっか港に寄るぞ」



船長は机の上に大きな羊皮紙を広げた。ヘビスが覗き込むと、それは世界地図であった。
少し古い物のようだが、今の物とそんなに変わりはないだろう。



「本当は幼なじみに会いにサゥドに行くつもりだったんだけどな。ま、しゃあねえ。えーと……こっから一番近い港ってぇと……」



船長はまずティムライト王国を指差すと、視線を泳がせた。
それから目的の場所を見つけると、「ここだ!」とばかりに"港町オリーブ"と記されている場所を指差した。ヘビスが叫ぶ。



「オ、オリーブ!?」

「なんだ、どうかしたか?」

「どうかしたも何も、忘れたんか!?ここ、わいの故郷やで!」

「おぉ、そういえば!?」



船長は改めて自分の指が指していた港町のある地方を見つめる。
すると――――なるほど、確かにヘビスの独特な方言が使われているユゥル地方だ。
よっぽど嬉しいのか、きらきらとヘビスは瞳を輝かせる。



「オリーブはハーブとか香料が盛んなんや!
もちろん保存食料とかも豊富やし、ここにしかない珍しい野菜もたーっくさんあるんやで!!」

「ほっほーぉ、そりゃいいな。ここからなら三日くれぇだし…うし、次はオリーブ行くか!」



よっしゃ!とヘビスはガッツポーズをとる。そのまま踊り出しそうな気配まであったが、
何を思ったのか一気に落ち着いてしまった。当然船長は首を傾げる。



「船長……ルゥのこと、どうすんや?」

「あぁ、そのことか」



あれからルゥはいっこうに自室から出てくる気配はない。当然仕事もしていない。いや、それはまったく構わないのだが。
問題なのは、食事や飲み物をいっさい受け付けないということだ。
このままでは飢え死にしてしまう。どうにかして元気を出させて、元の彼女に戻してやりたかった。



「困ったなありゃ……どーやったら元気になるっつーか、立ち直ることができるんかね」

「慰めようとしても無駄やろなぁ。やっぱ同じ経験や境遇を持った奴やないと、ルゥの気持ち理解しとうても理解できんもんな……」



ルゥと特に仲の良いクラウドに頼んでみればどうだろう、とヘビスは考えたがすぐに取り消した。
クラウドは冷静すぎる。冷酷といってもいいくらいだろう。今の彼女にとって少しきつすぎる言葉を言い放ってしまうかもしれない。
しかし、ルゥのことを昔から知っている者は他にはいない。モモカやアリヤから、二人は七年前ほど前から知り合いなのだと聞いた。
それと同時に五年のブランクがあるとも言っていたので二年の付き合いだということか。
二年という時間は長いとは言えない。だがヘビスたちのそれと比べればそれは遙かに長い時間であり、
今現在ルゥのことをよく知っているのはクラウドのみとなる。



「船長、クラウドに頼んでみたらどやろ?あいつ、冷たいところあるからちょっと不安やけど…」

「だな…ルゥのこと一番よく知ってるだろーし…。うし、ダメで元々だ!頼んでみっか!」



ヘビスの案に大きく頷いた船長は次の昼食の時ルゥの部屋に運ぶ役割をクラウドに頼み、ついでに元気づけてもらうことにした。
彼は快く承諾してくれたが元気づけられるかどうかはわからない、と苦笑いを浮かべていた。





















































無気力。それが今の彼女にぴったりと当てはまる言葉。
何も見たくない。何も聞きたくない。何もしたくない。
絶望や悲しみはとっくにこの身を通り過ぎてしまった。もうこの体には、何も残っていなかった。
彼女と同じ血を持つ者は、この世に誰ひとりとして残っていない。
エルフでありながら、愛する妻を失った悲しみから急速に老いていった父も、
二年前に化け物と化してしまったものの、人だった頃はとても優しかった兄も。
もう、いない。いないのだ。二人とも、母のところへと逝ってしまった。
彼女は膝を抱えて、うつむいた。涙は出ない。あの魔導師から逃げた時から、涙は乾いてしまっていた。

いつまで自分はここにいるつもりなのだろう。船長との約束は、ティムライト王国に帰るまでだった。
今は仕事も満足にできていないし、このままでは他の船員たちにも迷惑をかけるだけ。
これ以上、この船にいさせてもらうわけには――――

と、ドアを叩くノック音が鳴り響いた。それは彼女の耳にも届いていたはずだが、彼女は微動だにしなかった。
すると、もう一度ドアは叩かれた。今度は声も一緒だ。



「ル、……ウンディーネ、入るぞ」



少し気まずそうではあるが、凛としている声。彼女は少しだけ反応を見せ、開かれるドアの方に首をもたげる。
彼女を"ウンディーネ"と呼ぶのはただ、ひとり。



「昼飯だ。食いたくないだろうけど……」



クラウドは昼食をトレイから机の上に下ろすと、まったく手のつけられていない朝食を机からトレイに乗せた。
そのまま踵を返し立ち去るかと思われたが、彼女と向き合う形で椅子に腰掛けた。



「次は、ヘビスの故郷オリーブってとこに行くらしい。
そこはハーブや香料、そこだけにある珍しい野菜もあるんだってさ。それに……」

「クラウド」



彼の言葉を遮り名前を呼ぶと、虚ろな瞳で問うた。



「私……ここにいていいの?」

「?…」



クラウドは一瞬疑問符を顔に貼り付けたが、すぐに納得した表情を浮かべた。彼は即答する。



「船長は構わないって言ってた。まさか身寄りのない奴を突き放すようなこともしないだろ」

「うん……」



だけど、と続けようとしたが、クラウドが肩に両手を置いたので彼女は思わず言葉を飲み込んだ。
彼の真剣な眼差しに、少しどきりとする。



「お前は俺が守る。だから今は何も考えるな。何があっても守ってやる」

「……うん、ありがとう」



うつむくように頷いた彼女に少しだけ笑みが戻っていることを確認すると
クラウドは立ち上がり、再びトレイを手に持つとその場から立ち去っていった。















――――だけど















ついさっき飲み込んだ言葉を、胸中でつぶやく。















だけど、私のような小娘ひとりが生き残ったって















ここにいたって、どうしようもないじゃない。















ねぇ、クラウド















どうしてそこまで私を守ろうとするの?















こんなちっぽけな私に、守る価値なんてあるの?















あなたは、それでいいの?


























――――そうして少しだけ、昼食に手をつけた。





















































「どうだった?」



ルゥの部屋から出てきたばかりのクラウドにモモカが声をかけた。



「少しだけ笑ってたから、ちょっとは元気づけられたんじゃないか」



それだけ告げてクラウドはモモカの横をすり抜けた。その態度にモモカは不服そうな表情を浮かべる。



「ちょっと!」

「……今は、ひとりにさせてくれ」



その一言で、モモカはクラウドの様子がいつもと違うことに気づいた。そうして何も言わず、彼の背中を見送るだけに留まる。
彼の今の心が、痛いほどにわかってしまったのだ。そっと悲しそうに、モモカは目を伏せた。


















まったく手のつけられていなかった朝食を食堂に下げ、その足でクラウドは自室へと向かっていた。自責の念が胸を駆け巡る。



(俺は――――あいつに何をしてやれる?)



あんな言葉、気休め程度にしかならなかっただろう。正直…彼女を、ウンディーネを守りきれる自信はない。
まだまだ世の中には、自分より強い奴などごろごろ転がっているのだ。


王国にいたあの魔導師。殺気だけで殺される――――そんな気がした。
それほど強大な力を秘めた、恐るべき者。
自分はまだ、弱い。並より少し強いくらいでは足りないのだ。


静かにドアを閉めて、ため息をつく。ベッドに勢いをつけて飛び乗り、横になった。
ギシギシと音を立てて、上下に体が揺れる。
午後の仕事は特に予定されていない。魔物などが出ない限り、自分の出番はないだろう。
ふと、壁に立てかけてあった剣を抜いた。陽の光に当てられて、剣身がきらきらと光る。
今現在の自分の実力。それはどこまで通用するのだろう。


炎にやられて多少弱っていたとはいえ、自分の身長より何倍もあるクラーケンを倒すことはできた。
町のはずれにいた盗賊。あれは論外だ。雑魚の内にも入らない。
――――やはり海の魔物相手では、実力など計れないのだろう。
ある日突然、自分の実力を計れるような者が現れないものか。
たとえば自分と同じくらいの力――――そう。自分と戦えでもすれば、それが一番手っ取り早い。



(……なんて、自分と戦えるわけないか)



馬鹿げた考えだったな、とクラウドはため息をつくと剣を鞘に収めた。
影でも立体化しない限り、自分と戦うことなどできはしないのだ。ましてやその影の立体化もできるわけがない。


剣を元あった場所に戻すと、クラウドはまたひとつため息をついた。





暇、である。





今のところ海は穏やかなようだし、仕事もないから退屈だ。
何か魔物でも出てくれば、このもやもやとした気分を晴らせるものを。
いつもなら剣を磨くところではあるが、今はそんな気分ではない。
ごろりと寝返りを打つと、彼は目を閉じた。こんな時は眠ってしまうのが一番だ。
……耳から、"彼女"の悲壮な叫びが離れない。







――――少しだけ、胸が軋んだ。





















































そうして三日が経ち、船は無事にオリーブに到着していた。
軽い足取りでヘビスは港に降り、懐かしそうにきょろきょろと辺りを見回す。



「うわぁー、何も変わっとらんなぁ。相変わらずの活気や!」

「ってお前、何年ぶりに帰ってきたんだよ?」



同じく港に降り立ったアリヤがつっこみを入れた。どうやら今回は多めに買い込むらしく、荷物持ちとして同行することになったのだ。
アリヤ自身も特にすることもなかったので買い出しにつき合うことに文句はない。
むしろいい退屈しのぎになりそうだと喜んで引き受けたのだった。
アリヤのつっこみを受けて、ヘビスは指を使って考え始めた。やがて答えが出たのか、口を開く。



「そやなぁ、だいたい六年ぶりやな。しっかしほんと、なーんも変わっとらんなぁ」

「六年って…んじゃ、十二ん時にはもうすでに船で働いてたのか。
家族とか心配してんじゃねえか?買い出し終わったら挨拶とかした方がいいぜ」

「あー…たぶん帰っても歓迎されへんわ。わい、勘当されてしもうたから」



手をぱたぱたと振り、笑顔を崩さずヘビスは答えた。だがアリヤは戸惑いを隠せない。



「か、勘当って…お前何したんだよ」

「んー、どうも親父とはウマが合わなくてなぁ。
いっぺん大喧嘩して、そん時に親父が"お前なんか勘当したる!"言うたんや。
わいもそのまま家飛び出して、勢いで船長の船に飛び乗ったらそのまま雇われてな」



笑って気楽にそう言うものの、今のヘビスからは考えられない行動である。
あまりの行き当たりばったりの鉄砲玉にアリヤは呆れてしまい、苦笑せざるを得なかった。
気を取り直し、「んじゃ行くか」とヘビスを促す。彼は嬉しそうに頷いた。



「で、まずは何買うんだ?」

「んー、まずは保存食料やな!干し肉とか魚の干物とか、そこらへん行こか!」



そう言ってきょろきょろと辺りを見回すと、ヘビスは真っ先に目当ての店に飛び込んでいった。慌ててアリヤもその後を追いかける。



「いらっしゃい。ゆっくり選んでってやー」



店主の言葉に遠慮せず、ヘビスは山のようにある干し肉などに目を光らせる。
しばらくして、一ヶ月分ほどの干し肉や魚の干物を買い込んだようだった。
大量に包まれたそれをアリヤに手渡す。彼は少したじろいだ。



「お、おい…こんなに買い込んだのかよ。大丈夫なのか?」

「こんなんヘーキヘーキ!最低でも二ヶ月は持つやろ!さっ、次は調味料類や!どんどん行くでー!」



ヘビスはまたもや駆け出した。アリヤは何とか後を追いかける。
この調子で行くと、最後には目の前がふさがれてしまうほどになってしまいそうだ。
荷物持ちを引き受けたことを、アリヤは少しだけ後悔した。



調味料類を買い込んだ(そんなに多くはなかったが)後も、ヘビスの猪突猛進は続いた。
ハーブ、香料、野菜に果物。更には洗剤などなど。
先ほど予想したとおり、アリヤの視界は大量に積まれた荷物でふさがれてしまっていた。
ヘビスも荷物を持っていないわけではないが、アリヤの半分ほども持っていない。



「…おい、ヘビス…まさか、まだ買い物続けるってんじゃねえだろな…」

「あはは、まっさかー!心配いらへん、あの店で最後や!」

「……そうかよ……」



アリヤは少し頭を垂れた。数はどうあれ、この大量の荷物をまだ持っていなくてはならないのだ。
だがヘビスの指差す先を見て、今度は胸中でガッツポーズを決めた。そこには座るためのベンチがあったからである。


やれやれとベンチに腰を下ろして、同時に荷物も地面に置く。
盗られないように見張っていなければならないが、両手に荷物を抱えてつっ立っているよりはマシだ。
ポケットから一本煙草を取り出し、火を点ける。ため息のように白い煙を口から出すと、アリヤは改めてオリーブという町を眺めてみた。
思わず苦笑いを浮かべてしまうほど、賑やかな町である。
ユゥル地方の方言が様々な人の口から発せられている。そういえば、ヘビス以外の人間から方言を聞くのは初めてだ。
煙草の灰をとんとんと地面に落としてから、気づいた。右隣から視線を送られていることに。
何かと思って振り向いてみると、まだ六歳ほどの少年とばっちり目が合った。
どうやらこの少年がアリヤに視線を送っていたらしい。あまり小さな子どもと話したことがないアリヤは少しぎこちなく話しかけた。



「えーっと…何か用か?」

「んとなー、珍しいなぁっておもたんやー」

「へ?」



一瞬自分が吸っていた煙草のことかと思ったが、すぐに思い直した。
この燃えるような赤毛のことだろう。



"炎の髪"を持つ者を見かけるのは極々稀だ。大陸に五人いれば多い方である。
そのため他の町でも、好奇の目で見られることは珍しくなかった。
時には――――今はもう廃れてしまったが、"炎の髪"にまつわる古い古い迷信を未だ信じる者から差別の目を向けられることもある。
アリヤは目の前の少年を少しだけ恐れた。だが、相手はまだ小さな子どもだ。何十年も昔の迷信を知っているわけがなかった。



「そ…そだろ、"炎の髪"っていうんだぞー!すっげぇ珍しいんだぜ!」

「ええなぁ兄ちゃんはー。ボクの髪なんて真っ黒や。兄ちゃんみたいな赤いのがええ!」

「なーに言ってんだ!オレは真っ黒の方がかっこいいと思うぜ?お前によく似合ってるしな!」



アリヤはくしゃくしゃと少年の頭を撫でた。すると少年の大きな黒い瞳が照れたような嬉しいような色を浮かばせた。
少年の素直な反応にアリヤの顔も思わずほころぶ。とそこに、女の声が飛び込んできた。
思わず二人が振り向くと、視界に二十代後半ほどの女性を認められた。
と、それと同時に少年が「お母ちゃん!」と叫んだ。ぱたぱたと母親は駆けてきて、少年の目線に合わせてしゃがみ込む。



「んもー、あんた何やっとったん!?めちゃくちゃさがしたんよ!」

「あのなー、この兄ちゃんと話してたんや。ほら、髪が赤うてかっこええやろ!」



そこで母親が初めてアリヤを見た。だが迷信を知らないのかそれとも知ってはいるが
まったく信じていないのか、アリヤに向けて申し訳なさそうに微笑んだ。



「すみません、子どもの相手をしていただいて…。何か失礼なことしませんでしたやろか」

「あ、いや全然。オレも仲間の買い物終わるの待ってただけなんで…」



アリヤの言葉に母親はもう一度「すみません」と頭を下げると、「ほら、帰るよ」と少年を促した。



「兄ちゃん、バイバーイ!」



母親と手をつないだ少年は空いていた方の手でアリヤに手を振る。アリヤもそれに答え、小さく手を振った。
少年と母親の姿が見えなくなったところで、アリヤはもう一度さっきの煙草を口に運んだ。
自嘲気味の笑みを浮かべて、ひとりごちる。



「なーにびくびくしてんだか…かっこわりぃったらありゃしねえ」



とそこに、買い物を終えたヘビスが戻ってきた。さっきより荷物が二倍に増えている。
アリヤは立ち上がり、靴先で煙草の火を消すと山ほどある荷物を両手に抱えた。少し足がよろけたが、何とか持ち直す。



「結構時間かかってたな。何買ってたんだ?」

「海の上だと潮風に当てられて金属類はすーぐサビるやろ?だからサビ取りとかスパナとかボルトとかクギとかネジとかいろいろな!
アリヤこそ、待ってる間何してたねん?暇だったやろー」

「あー。迷子っぽいガキの相手してたよ。すぐ母親が来て、帰ってったけどな」

「ふーむ…ここ、子どもはかなり迷いやすいやろなぁ。まあええ、船に帰るで!」



ヘビスの言葉にアリヤはうなずき、一歩一歩ゆっくりと歩き始めた。ヘビスもそれに合わせる。
しかし、異常ともいえるほどの荷物の量を見たモモカに怒鳴られ、更に彼女から二人に回し蹴りがプレゼントされたことは言うまでもない。





















































ヘビスとアリヤの二人が船に戻り、買い込んだ荷物を整理し終えると船は太陽が海に落ちるのも待たずに出港した。
特に仕事も依頼されず、ヘビスもオリーブに用事がないということなのですぐにサゥドに向かうことになったのだ。
どんな物をいくつ、そしてどれほどの値で購入したのかという報告書をヘビスは読み上げ船長に提出した。
そして仕事に戻ろうと船長室のドアノブを握ったが、突然船長に呼び止められた。疑問の表情を浮かべてヘビスは振り返る。



「ヘビス、本当によかったのか?」

「何が?」

「いや、何がって…オリーブはおめぇの故郷だろうが。もっとゆっくりせんでよかったのか?」

「なんだ、そんなこと気にせんでええええ。
なーんも変わってないこと確認できたんやし、それだけで十分や。どうせ家に帰っても…なぁ?」



「この船に入る時に、一度話したやろ?」とヘビスは更に付け足した。屈託のない笑顔で。
そこまで言われれば船長も納得するしかなく、ヘビスに引き留めたことを詫び「もう戻っていいぞ」と告げた。
ぱたん、とドアは閉められ、廊下に足音が響く。
やがてその足音も耳に届かなくなると、船長室に静寂が流れた。だがすぐに、大きく息を吐いた音が聞こえてくる。




言うまでもない、船長のため息である。




どうも最近ツイていない。いや、運の問題ではないか。
ただひとつ、確実なこと。それは、






















"大きな何か"が動き始めているということだ。






















この世界から大きな戦い――――戦争が消えようとしていた。
本当の平和が訪れようとしていた。





けれど、歴史は繰り返す。





人は争い合い、傷つけ合い、殺し合う。





そうして多大な被害を追いながら戦争は終結し、戦争の虚しさを知った人は子孫に伝えていく。
それを伝えられた子孫は、先祖たちの過ちを繰り返すまいと心に決める。





それでも。





時を経て、戦争の虚しさ、悲しさ、ばかばかしさを忘れた人は同じ事を繰り返す。
先祖の教えを忘れ……私欲を満たしたいがために。





また――――人は争い合い、傷つけ合い、殺し合う。


























悪循環は、終わらない。


























反省も学習もしない愚かな人は、永遠に繰り返すのだろう。


























(…なん、だ?)



船長は思わず胸を押さえた。何か、ざわざわとして落ち着かない。
いやに胸騒ぎがする。また、何か起こりそうな――――そんな気がする。


"大きな何か"は、今の世に悪影響を及ぼすに違いない。
胸騒ぎは当分、収まりそうになかった。




















































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あとがき

他の四話より、少しだけ長めの五話でした。
始めの方、インパクトを与えられたのなら成功です。ちょっと頑張ってみたので…。
後半からアリヤ、ヘビスの過去をほんの少しだけ掘り下げてみました。
なんだか予想できてしまいそうですが。あ、あと次回は戦闘シーンが入ります。

ではまた次回に。