目が眩むほど白い大地に一塊りの肉塊が崩れ落ちた。
肉塊からは赤い液体が流れだし、真っ白な大地を鮮やかな赤に染めてゆく。
見渡す限りの雪原ではよく引き立つ、もうぴくりとも動かない肉塊に歩み寄る黒い影。
大きな死神の鎌を持ち、肉塊の首に押し当てた。





また、血が飛んだ。





ごろん、と胴体から引き離された首。
黒い影は頬に付着した血も気にせずに、首を拾った。





首の斬り口から、白い大地を染めあげる赤い血が滴る。





黒い影はこれまた黒い袋を取り出し、無造作に首を投げ入れた。










ふぅ…。










溜め息。





黒い影は白い溜め息を吐いていた。



(私は……)



雲ひとつない青空を仰ぐ。



(今まで何人……殺したのだろう?)



物心気づいた時から暗殺者として育てられ、十の頃にはもう血に染まっていた。
母から見捨てられた父からは、ただ二つの言葉を飽きるほどに教えられた。













(殺さなければ殺される)

(敗者は死んだも同然。生きる価値は無い)













壊れたテープレコーダーのように、何度も聞かされた。
やがて全身が拭っても拭い切れぬ血に染まった頃、ひとつの疑問が浮かび上がった。




私は何故人を殺している?




私は何故人を殺さなければならない?




私は何故まっとうな人の道を歩められない?




私は何故――――




私は――――……。




























…ふぅ。





いい加減考えるのはやめようと、思考を遮るような溜め息。







闇の世界に身を投じ、主の命令であれば誰だろうと殺す。それが黒い影の日常だ。
それ以外の日常を黒い影は知らない。暖かい太陽の下で暮らす、光の世界の日常を。
だがそれを欲しいと思うのは、あまりにも今更過ぎること。
どうあがいても、自分は闇の世界でしか生きることができないのだから。










































ぎゅ、ぎゅ、と足音を立てながら、黒い影は雪の上を歩き出した。